続・捨て犬
第15章 早く大人になって
エミの話によると
萩原のパン屋に
萩原が来てパンを焼き
新しく
女の人が働きはじめたらしい
アルバイトの女の子が
色々かわるのは
よくあることなんだけど
俺はとにかく
萩原のことが
気になって仕方なかった。
あいつ…何考えてんだ?
「エミ
新しい女の人に
ちゃんと挨拶したか?」
まるで
小学生の子供に
話しかけてるみたいだ
「ちゃんと…?」
「ちゃんとっつーのは…」
あれ?
ちゃんとって…なんだ?
「ほら、あれだ
よろしくお願いします!
みたいな?」
エミは
小さく首を振った
「あ、でも
よろしくお願いします!
ってのは
新人さんがいう言葉だよな(笑)」
「言った」
「え?」
「よろしくお願いします」
だから……(笑)
「誰が?」
「久保木さん」
あぁ、その新人さんは
久保木さんっつーんだな?
相変わらずな
やりとりに
俺は
和んでいた
こんな
普通の
こんな
なんてことない
エミとの
おかしなやりとりに
俺は
幸せを感じていた