
魔境夢想華
第3章 交差する不安《凜視点》
「いってぇー……」
痛む鼻頭を抑えながら、俺はゆっくり目を開いた。
「大丈夫?」
頭上から声がして、俺は誰かとぶつかったんだと悟った。
「あ、ああ、はい。大丈夫です……」
目線をそれへと向ければ、ぶつかった相手と向かい合う形となる。
「そう、それはよかった」
にっこりと相手が安心したように微笑む。
上級生だろうか。落ち着いた雰囲気を醸し出しているその人は、鼻筋高く、芸能人と名乗ったとしてもきっと通用するような、整った顔立ちをしていた。
(この学校って女子じゃないけど、ほんとにカッコいいのが多いよな)
ちょっとした嫉妬を抱きながらも、それをおくびにも出さないように意識する。
「す、すいませんでした!」
上級生か、それとも同級生か解らないけど、とりあえずよく見てなかった俺に非があるのだから、ここは素直に謝って、早くここから出ようと足を進めた。
「あ、待って!」
だけどそんな俺を先輩らしき彼が呼び止めた。
「ごめん、余所見してたみたいで」
次に出てきたのは謝罪の言葉。
「いえ、俺の方こそ見てなかったんで……。すいませんでした!」
軽く頭を下げて、もう用はないと動き出した瞬間、またも相手に止められる。
いい加減にしてほしいと苦い表情をすれば、相手もそんな俺に気付いたようで、途端に苦笑で返された。
「そんな嫌がらないでよ。別に取って食おうなんて思ってないんだから」
その台詞に、俺が露骨に顔に出してたことを深く後悔し、余計に居辛くなってしまう。
「俺は三年三組の岸谷貴史(キシヤタカシ)っていうんだ。君の名前は?」
「…………」
何で名前を名乗る必要があるんだ?
たかがぶつかっただけじゃないか。お互いに謝ったんだし、もう関係ないはずだ。どうしてそんな展開にいったんだろうとますます不審に思いながらも、相手が名乗って自分は名乗らないというのもおかしな話だし、また相手が先輩だっただけに、やむやむ仕方なく自分の名前を名乗る。
「俺は……二年一組の浅倉凜です」
それでも用心深く名乗れば、岸谷先輩の表情が更に柔らかくなる。
痛む鼻頭を抑えながら、俺はゆっくり目を開いた。
「大丈夫?」
頭上から声がして、俺は誰かとぶつかったんだと悟った。
「あ、ああ、はい。大丈夫です……」
目線をそれへと向ければ、ぶつかった相手と向かい合う形となる。
「そう、それはよかった」
にっこりと相手が安心したように微笑む。
上級生だろうか。落ち着いた雰囲気を醸し出しているその人は、鼻筋高く、芸能人と名乗ったとしてもきっと通用するような、整った顔立ちをしていた。
(この学校って女子じゃないけど、ほんとにカッコいいのが多いよな)
ちょっとした嫉妬を抱きながらも、それをおくびにも出さないように意識する。
「す、すいませんでした!」
上級生か、それとも同級生か解らないけど、とりあえずよく見てなかった俺に非があるのだから、ここは素直に謝って、早くここから出ようと足を進めた。
「あ、待って!」
だけどそんな俺を先輩らしき彼が呼び止めた。
「ごめん、余所見してたみたいで」
次に出てきたのは謝罪の言葉。
「いえ、俺の方こそ見てなかったんで……。すいませんでした!」
軽く頭を下げて、もう用はないと動き出した瞬間、またも相手に止められる。
いい加減にしてほしいと苦い表情をすれば、相手もそんな俺に気付いたようで、途端に苦笑で返された。
「そんな嫌がらないでよ。別に取って食おうなんて思ってないんだから」
その台詞に、俺が露骨に顔に出してたことを深く後悔し、余計に居辛くなってしまう。
「俺は三年三組の岸谷貴史(キシヤタカシ)っていうんだ。君の名前は?」
「…………」
何で名前を名乗る必要があるんだ?
たかがぶつかっただけじゃないか。お互いに謝ったんだし、もう関係ないはずだ。どうしてそんな展開にいったんだろうとますます不審に思いながらも、相手が名乗って自分は名乗らないというのもおかしな話だし、また相手が先輩だっただけに、やむやむ仕方なく自分の名前を名乗る。
「俺は……二年一組の浅倉凜です」
それでも用心深く名乗れば、岸谷先輩の表情が更に柔らかくなる。
