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「浅倉か……。君、見掛けないけど転校生かな？」
「え、まあそうですけど……」
一体何なんだ。あと数分で授業始まっちゃうんだから、いい加減教室に戻りたいのに。
「今度、お詫びさせてもらうよ」
彼の突然の申し出に、俺は一瞬、その意味を理解出来ずにいた。


たかがぶつかったぐらいでお詫び？　そんなことされるほど、重大なことなのか？
俺の中で疑問の嵐が飛び交う。

それでも何とか冷静に対処して、嫌味なく断ろうとした瞬間に、タイミングよく授業の始まりを告げるチャイムが鳴り、今度は岸谷先輩が「じゃあね」と言って手を振りながら、トイレの個室に入っていった。

何だか岸谷先輩に振り回された気分になりながらも、早く教室に戻らなくちゃという思いが強く、複雑な気分のまま、俺はトイレを後にした。



やっと解放されて教室に戻る。
とっくにチャイムは鳴り終わり、授業が始まっているかとひやひやしていたが、まだ教室内は生徒たちの声でにぎわっていた。

よかった……、まだ始まってなかった。
思わず安堵の息を洩らしてしまう。