魔境夢想華
第2章 転校生《凜視点》
毎夜、夢を見る。 あまりにも切なく、胸が切り裂かれる 夢。
***
誰かが泣いている。 何時も誰かが泣いている。
ああ、もう泣かないで。哀しみの涙を流す彼の頬に触れようと、腕を伸ばしてみる。だけど上手く伸ばすことが出来ない。もう、腕を伸ばすことすら辛く、そして何よりも苦しい。
それでも貴方が泣いているから……。 精一杯、渾身の力を出して腕を伸ば す。
もう視界もぼやけ始めている。きっと自分の死期は迫っている。時間がない。
薄らとしか見えない自分の世界。自分の腕、それは痩せ細った、頼りない腕だった。激痛に震えるその腕から は、紅く滴っていた。そんな紅に染まった掌は、今も涙を流す、悲哀に満ちた勇猛な戦士の頬にとやっとのことで触れる。
「もう……泣かないで。貴方は……、 貴方だけは生き延びて……」
それが最期の願い。 貴方だけがこの世の光を照らす、最後の希望であり、そして灯火なのです。
私はあまりにも非力過ぎました。私の 所為で、尊い命を犠牲にしてしまっ た……。これは私が受ける罰なのです。
だから哀しまないで。 私の為に涙を流さないで。心を痛めないで。
「貴方だけは……生き延びてくださ い……」
命の灯火が消える。
ゆっくりと真っ暗な世界へと身を投じる。目蓋を閉じ、意識を切り離していく。
「姫……、姫――っ!!!」
そんな私の耳に、貴方の絶叫が何時までも木霊した……。
***
誰かが泣いている。 何時も誰かが泣いている。
ああ、もう泣かないで。哀しみの涙を流す彼の頬に触れようと、腕を伸ばしてみる。だけど上手く伸ばすことが出来ない。もう、腕を伸ばすことすら辛く、そして何よりも苦しい。
それでも貴方が泣いているから……。 精一杯、渾身の力を出して腕を伸ば す。
もう視界もぼやけ始めている。きっと自分の死期は迫っている。時間がない。
薄らとしか見えない自分の世界。自分の腕、それは痩せ細った、頼りない腕だった。激痛に震えるその腕から は、紅く滴っていた。そんな紅に染まった掌は、今も涙を流す、悲哀に満ちた勇猛な戦士の頬にとやっとのことで触れる。
「もう……泣かないで。貴方は……、 貴方だけは生き延びて……」
それが最期の願い。 貴方だけがこの世の光を照らす、最後の希望であり、そして灯火なのです。
私はあまりにも非力過ぎました。私の 所為で、尊い命を犠牲にしてしまっ た……。これは私が受ける罰なのです。
だから哀しまないで。 私の為に涙を流さないで。心を痛めないで。
「貴方だけは……生き延びてくださ い……」
命の灯火が消える。
ゆっくりと真っ暗な世界へと身を投じる。目蓋を閉じ、意識を切り離していく。
「姫……、姫――っ!!!」
そんな私の耳に、貴方の絶叫が何時までも木霊した……。