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魔境夢想華

第2章 転校生《凜視点》

ゆっくりと覚醒する。

徐々に慣れてくる視界。朝の光を捉え、俺は今日という一日を迎える為にベッドから起き上 がった。
カーテンを開ければ真っ青な快晴。 やっぱ晴れていると気分がいい。

だけどまた別の感情も抱いたままでも あった。


「またあの夢か……」
ここ最近、毎晩見る不思議な夢。

戦国時代なのか、場面は荒れ果てた 地。所々に黒煙が立ち上ぼり、辺りは 何かが腐敗した異臭を放っていた。

おそらくそこは戦場。何を相手に戦を 繰り返しているのか、そこまでは定か ではないが、俺は何時も戦乱の中心に いた。

そして毎回聞こえるのは誰かの嘆き。 それは悲痛な絶叫と、絶望に満ちた発 狂。
時に誰かが一緒にいた。
鎧に身を包む若武者。それは一人だったり複数だったり……。
だけどその顔ははっきりとは見えない。

視界は常に地獄を映している。そして ある声が響いてくる。

『もう……、誰も失いたくありませ ん……』

澄み切った綺麗なその声は若き女性 だった。
だが声はすれど、その女性の姿は一度 も拝んだことはない。

『姫……』
振り向けば若武者が憂いを込めて囁 く。

そして必ず絶望の涙を流し、断末魔の雄叫びをあげる。

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