テキストサイズ

精霊と共に 歩睦の物語

第8章 共にする者

「お兄ちゃん!!」
 実が柵から身を乗り出して歩睦を見ようとする。

「危ないよ」
 信司が実を抱きかかえる。

「あ、ありがとう…」
 客席に下ろされる実。


「く!」
 歩睦は北沢の胴を打つ。

「胴あり!」
 主審が旗を上げる。

 オーっと観戦者が声を上げる。

「がんばって!」
 実は兄の試合をいいようのない不安を持って、見ていた。

 ハァハァ…
 肩で息をする両選手は、竹刀を激しく打ち合う。


「時間です」
 タイムを取っている人が旗を揚げた。

「止め」
 主審が、試合を止める。

 ワーっと観戦者が声を上げる。

「勝った!」
 実は両手を上げて喜ぶ。
 たくさんの歓声と拍手が兄に向けている。


「やったね…父さん?」
 見上げた先の父の顔が険しい。

「どうしたの?」
 実は消えかけていた不安がまたあふれる。

「実くん…お父さんが上げた御守り持ってきていますか?」
 信司が実に聞く。

「お守り?う、うん…」
 実は胸の中からお守りを引っ張り出す。

「実くん。お守りをしっかり首に下げていなさいね」
 念を押す信司。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ