精霊と共に 歩睦の物語
第8章 共にする者
「ぐぐががぁ」
北沢の身体から赤黒いオーラをあふれてくる。暴れている。
そのオーラは、鼻に付く異臭を放っている。
「お父さん。この臭い何!?」
鼻を押さえて、すわり込む実。
「ぐぎゃぎゃぁぁ」
叫び声が衝撃波のように響いている。
「わ!」
ビリビリと響く音を避け、耳を塞ぐ実。
衝撃波の力は二階席を支える柱を揺らし、実がいる所が、一階に落ちようと動き出した。
耳を塞いだ状態の実には、その音が聞えていなかった。
だから、逃げようとしていない。
「実くん!」
異変に気が付いた信司が、実を助けようと手を出すが間に合わなかった。
「わぁ!!」
実は、なすすべなく落ちていく。
「キャー」
それを見ていた観戦者や選手達が慌てて逃げ出す。