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精霊と共に 歩睦の物語

第8章 共にする者

「ウソ!さっきまで三本だったのに、いきなり圏外?」
 信司ともう少し情報を交換いたくて、電波を探していると、電話がかかってきた。

 ジリリリリィ
 自分の設定着信音でない。

 ディスプレイに、着信の番号がない。非通知でもない…

「………も…もしもし?」
 不安を持ちながら電話に出る景。


  「……母さん?」
 携帯から聞えてきたのは、歩睦の声。


「歩睦!歩睦なのね!」
 景は無事を確認する。

  「……母さん…許可をちょうだい…」
 歩睦の声が、少し遠い。

「許可……まさか!?ユティルが側にいるの?」
 景の携帯をもつ手が震える。

  「ユティルの事がわかるの?…なら!話は早い」

 景は口を押さえたまま、何もいえなくなった。

 まだ、『約束の刻』まで時間があるはずだった…

  「僕は急いで帰って…北沢君を止めないといけない。
  そのためには…母さんなら、意味分かるんだね」
 歩睦の声はシッカリしている。

「歩睦は『戦う』を選んだのね…」
 景は下唇をかみしまる。

  「うん!」

「…ユティル…」
 景は深呼吸をして言う。

 {はい}
 ユティルの声が聞える。

「共にすることを許します。歩睦に加護を…」

 {お任せください}

 ツーツーと、単調な音が聞える。

「あ…歩睦………」
 電話が切れた事が分かった途端、景はその場に座り込んで頬にひと筋の涙が流れる。

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