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精霊と共に 歩睦の物語

第8章 共にする者

「父さん…」
 歩睦の意識が戻る。

「お兄ちゃん!」
 実が歩睦にかきつく。

「おろして…」
 歩睦が信司に言う。

「大丈夫ですか?」
 信司は下ろしながら言う。

「うん…」
 歩睦の様子がいつもと違う。


「お兄ちゃん!心配したよぉ」
 実が顔をクシャクシャにして泣いている。

「心配させたね、ごめんねぇ」
 歩睦が実の頭を軽くなぜる。

「先輩…」
 歩睦が楓の方をむく。

「どこか痛いのか?」
 楓が歩睦に近寄る。

「お手数ですが、二人を外に…」
 チラッと実を見る。
 実は父に抱かれ、ようやく泣き止んでいた。

「歩睦は?」 

「僕は、北沢くんを止めます」

「どう…あ…」
 楓は歩睦の肩に座るユティルを見て、理解した顔をした。

「…ふう…わかったわ。実ちゃんにケガなんかさせないから」
 おネエ言葉に戻った楓はウインクする。

「お願いします」
 歩睦はニコッと微笑む。


「父さん…僕…用事がある…」
 今度は実を抱く信司のほうを向く。

「用事ですか…」
 実の頭を撫ぜながら、歩睦を見つめる。

「…今なら…止められるはず…根拠はないけど…」
 歩睦のペンダントが輝いている。

「わかりました。父さんと実くんはお母さんの所で待ってます」
 信司にははっきり見えないが、暖かいモノの存在を感じている。

「いってきます」
 歩睦は、ニコッと笑ってその場から離れる。


「お父さん。お兄ちゃんはどこ行くの?」
 実が心配する。

「一緒に逃げると、捕まるからね。別々に逃げるんだよ」
 信司は楓と一緒に真っ黒の動く物の前に出る。

「行くよ。楓君!」

「はい!」
 真っ黒の動く物が襲ってくるのを、倒しながら外に向う。

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