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精霊と共に 歩睦の物語

第12章 歩睦、知識を集める

「父さん、僕は、もう大丈夫だよ。
さっきはちょっと変だったけど、どんな話でも聞くし、
信じる?って言うかもう、色々ありすぎて、びっくりしないかも」
 歩睦は目いっぱい笑顔を作る。

「そうか…じゃ、お母さんが来るまでに、これを渡しておく」
 小さな石が付いた革製のストラップ


「大学の別館にある資料室の通行パスだ。
 本当は部外者には渡してはいけないものだが、歩睦くんは当事者側だから問題はないと思う。
 あ、母さんには内証だぞ!」

「わかった…財布に付けるよ。
 一番持ってて変じゃないよね」
 ストラップをポケットに入れる。



「質問の答えって訳じゃないけど…歩睦くんは確かに特別な子供だよ…」
 信司は、少し微笑みながら話始める。


「歩睦くんも知っているように、景さんは由緒正しい家のお嬢様。
父さんみたいな一般人と結婚したりできなかったかもしれない」

「駆け落ちしたんでしょ?」

「そうだね…結局、そんな形になった…」

「景さんは、いろんな意味で大事な大事な体…
 そのお嬢様をあの環境から連れ出したかった…だけだったんだけどね。
 最初は勢いがあったけど…しだいに大事(オオゴト)だって身にしみたよ…」

「大変だったの?」

「うーん、大変って言えば大変だね。
 お母さんは今は、そうでもないけど、何にも知らない、出来ない、お嬢様だったからね」


「その”お嬢様”やめてよ。恥ずかしい」
 景がお茶を持って現れる。


「本当の事だよ。
 いい機会だから歩睦にも知っててもらおうってね」
 悪戯っぽく笑う信司。

「もう!歩睦。
 知らなかっただけよ!
 覚えたらちゃんと出来るんだから!!」
 歩睦に向かって真剣に言う景。


「はいはい。わかったよ」
 歩睦は苦笑しながらお茶を貰う。


「さて、景さんが来たから…」
 信司は一口お茶を飲む。



「本格的に、説明するね…」
 信司は話し始めた。

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