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パパはかわら版

第2章 パパはかわら版A

橋龍「なんで、そんなことになるんですか。それでは、瓦版なんてないのと同じですよ」
有吉「まあまあ、そういうな。平凡屋がなくなったら、誰が、市民に事実を伝えるんだ。私らの仕事は、こういった状況でも、伝えられる限りのことを伝えるというものなんじゃないのか」
橋龍「しかし、それにしたって、財政に関しての情報に検閲を持ち込むようなことを許していたら、私らの仕事は成り立ちませんよ」
有吉「分かっているよ。向こうの方も、それほど厳しい検閲じゃないといっているんだから、とりあえず様子を見るしかないんだ」
橋龍「ほんとに、酒井大老になってから、すべてが逆戻りですね。勘定奉行も、老中筋の水野好弘になってしまった。これでは大老がすべてを私物化しているといっても、言い過ぎじゃない」
有吉「しかしなあ。そこに切れ込むというのは、どうにもできないことだよ。もともとが、提言書だの、情報公開だのと、快く思わない連中は、幕府の中にはいくらでもいるんだ。それに、汚職まみれの体質というのは、ここにはじまった訳じゃない。お互いが便乗しあった結果のようなもんだ。私らの力では、どうにもならん話だよ。それでも、瓦版は、今の時代にはなくてはならないものになっているんだ。向こうさんも、それほど酷いことはしてこない」
橋龍「しかしですねえ」
有吉「もうこの辺で終わりにしよう。何度話しても同じだ。とにかくできる仕事はいっぱいある。それをこなすだけだよ。いいな、龍」

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