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パパはかわら版

第2章 パパはかわら版A

橋龍は、この手の子供が大嫌いで、言葉を失った。ちょっとにらみつけたようにも見えたが、そのとき、勇一の妻の時枝が帰ってきたのだ。

時枝「あら、どうしたんですか、橋龍さん」
勇一「いやなにね。私が、隣のお子さんを誘って、肉鍋を作ったんです。それで、橋龍さんを誘ったのですが、ちょうどあなたが帰ってきたのです」
時枝「そうだったの。それだったら、いいじゃないですか。ご一緒にどうぞ」
橋龍「でも、それはおじゃまじゃないですか」
時枝「いえいえ、かまいませんよ。お隣同士なのに、全く知らん顔というのがこの長屋では普通ですが、それも行き過ぎるのはどうかと思います。こういうときでないと、なかなかご一緒できませんから」
橋龍「そうですか。それじゃ。おじゃますることにします」

橋龍が、家に上がろうとしたところで、幸江が良江のことを思い出したので、橋龍が呼びに行った。

橋龍「良江君、隣でご飯をいただくことになった。一緒に行こう」
良江「わたしは、いいです」
橋龍「どうしたんだ、君は。どこか悪いんだろう。それだったら、はっきりいいなさい」
良江「どこも悪くありません」
橋龍「それじゃなんなんだ」

そういったところで、橋龍は、今朝、初江と幸江が歯ぎしりのことで良江が落ち込んでいるという話をしていたことを思い出した。それを、思い出して、橋龍は、けらけら笑いだした。

良江「何がおかしいんですか」
橋龍「いやね、君が歯ぎしりで悩んでるって言う話を思い出しちゃって。そんなの気にすることないよ」
良江「そういうわけにはいきません」
橋龍「大体ね、子供のうちから歯ぎしりがうるさいなんて話を私は聞いたことがない」
良江「じゃあどういうことなんですか」
橋龍「だから、君は彼女たちにからかわれたんだよ」
良江「ええ、どういうことですか」
橋龍「君が寝ているときの話だろ。話を少し大きくしたんだよ」
良江「ほんとにですか」 橋龍「きっとね」 良江「もう頭にきた」
橋龍「よし、分かったろう。それじゃ、行こう」

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