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パパはかわら版

第3章 パパはかわら版B

左吉「それで、横浜の方なんですが、あと10日はみてもらえますか。ここから探しに人をやるというのは、難しいんで、知り合いに飛脚を紹介してもらいました。仕事の合間と言うこと何で、時間は少しかかりそうです」
橋龍「、、分かった、ありがとう」
左吉「で、この娘たちがどうしたんですか。みんな行方しれずのようですが」
橋龍「いや、なんでもないよ」
左吉「そうですか。詮索はしませんが、橋龍さんに子供っていましたっけ」
橋龍「ばかいってんじゃないよ」
左吉「放浪の末に、つけが回ってきたということなのかなと思ったんですけどね」
橋龍「ないない」

橋龍は、今日も版説に立った。最近は、勘定方への取材が以前よりも厳しくなったこともあって、ひったくりだあ、辻斬りだあと、橋龍本来の瓦版の仕事と感じていたものとは、遠ざかっていっているようなところがあった。そういった意味では、やりがいを失ったわけではなかったが、はりのない毎日を送っていたというのも事実だった。別に、それを埋めるというわけではなかったが、やっかいな子供たちに悩まされることになった。橋龍からしたら、確かにつけがまわってきたのだ。昔から、こういったもめ事は何度かあった。金でかたをつけたこともあった。ほとんどが、相手が納得したものだと思っていたので、自分なりには、問題を解決したつもりではいたが、それがこういった形になって出てくるというのは、橋龍からしても、あってもおかしくないことだと思うのだった。そもそも、橋龍は、独身主義者だったんだろうか。彼は、資産家の出ではあったが、それを継ぐ立場にあったわけでもないので、自由な立場で人生を送ることができた。若いときは、いい娘がいるだのなんだのと、親類に進められることも多かったが、その都度断り自分には自分の生き方があるということを、伝えていた。橋龍は、酔うと我を忘れる癖があるので、自分の思いとは違う結果というのが、常に転がっていたので、そういったところで、自分は結婚には向いていないと思ったのかもしれない。それとも、酒癖の悪さから、自分の仕事と、個人の生活のバランスを取る自信がなかったということなのかもしれない。それは、橋龍自身にしか分からないことだったが、とにかく、独身を貫いてきたのだった。

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