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二度目の恋

第2章 臆病な自分と、優しい彼と

帰りがけにかかってくる内線にはロクな事がない。


「はぁ…終わった…」


確定をクリックして、データを保存する。


来週が締め切りだった資料をやっぱり欲しいから、と言われたのだ。


受話器をとり、依頼者へ掛ける。


「…野瀬です。…え?帰ったぁ?」


思わず声が裏返ってしまった。


「…いえ、なら携帯へ掛けてみます。はい。失礼します…」

慌てて電話を切り、番号表を取り出す。

あのタヌキ課長、明日必要だから頼むって言ってたのに!


番号を押して、相手が出るのを待つ。


何回か呼び出し音がした後


「はい」


「…業務後にすいません。管理部の野瀬です、お疲れさまです」


「あ、悪いな。急に頼んで」


「先ほど頼まれた資料、共有フォルダーに保存しました。データ移行とグラフ作成しかしてないので、必ず確認して下さいね」

「何年分くらい移行した?」


「期間を言われなかったんで、3年と1年ごとに。」
会話をしながら、違和感を感じる。

何か、声が近い気がする…


「…依頼して2時間7分…。さすが、ベテランだな」

「きゃあ!」


真後ろで声が聞聞こえて、振り返ると依頼者の宮崎課長が立っていた。

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