偽りの桜
第1章 生かされた命
バタバタ…(物音)
「何だよこんな夜中に…」
何だか隣りの住人がヤケに騒がしい。
俺は二階建てのボロアパートに住んでいて、隣りには年の近い若者が住んでいるみたいなんだが、あんまり話した事はない。
「もう勘弁ならねー」
俺はあまりの騒がしさに文句を付けようと隣りを訪れた。
「ん、あれ?」
玄関の前に立つと閉め忘れたのか、不用心にもドアが少し開いている。
「あのー…」
思いきってドアをあけてみると、
部屋の真ん中に輪を作ったロープを垂らし、その下で椅子の上に立つ隣人の姿が目に飛び込んできた。
正に『首吊り自殺』を絵に描いたような分かりやす過ぎる光景だ。
「何やってんだよ」
俺はすぐさま隣人を引きずりおろした。
「な、なんですか、いきなり…」
隣人はかなり動揺しながら話しかけてきた。
「なんですかって、てめーが夜中にバタバタうるせーから来てみたら、そんなになってっから、こんなになったんだろ」
俺もまさかの状況に動揺して謎の言葉を発した。