偽りの桜
第1章 生かされた命
「目が覚めました!」
自分から説教しておいてなんだが、隣人の気持ちの切り替わりの早さに驚いてしまった。
「そ、そうか…」
「何だか生きる理由が見つかった気がします。僕も誰かの為に生きていきたいと思います」
「そ、それは良かった…」
「あの…」
「どうした隣人」
「はに…」
「えっ」
「僕の名前です。さっきから隣人って呼ばれてるんですが、僕の名前は羽仁(はに)といいます」
「羽仁…変わった名前だな。俺の名前は児玉だ、宜しくな」
「児玉さんですか、宜しくお願いします」
同じボロアパートに住む隣人同士。
ずっと名前も知らずにお互い暮らしていた。
これが俺と羽仁の出会いだった。
この出会いをキッカケにとんでもない未来が待っているなんて、この時の俺は知る由もなかった。
第1章 生かされた命<終>