アルカナの抄 時の息吹
第2章 「塔」正位置
夜になり、いつもみたく城内をふらつく。自分の部屋から王の私室までは、どこに何があるかだいたい把握できたようだ。
ふと、朝の出来事を思い出す。あの靴は、どこから降ってきたんだろう。
記憶を頼りに、外の景色と照らし合わせながら歩いていく。
「確か、この辺…」
ここらは、自分の部屋からも、王の部屋からも離れており、自分の見覚えのある所からは少し外れていた。
一番奥の部屋は、なんだか不気味なほど静かで、なんとなくそこから妙な雰囲気が流れてくるようだった。
誰か、いるのだろうか。あの青年か。だが、降ってきたのは女性用の靴。
確かめてみたい気持ちが強くなり、そっと踏み出す。…と。
「何してる」
突然後ろから飛んできた声に、びくりと肩を震わせた。振り向くと、王が立っていた。
「なんだ、誰かと思ったら。脅かさないでよ」
「ここには近づくな」
いつもよりトーンの低い声に、恐怖と…無条件に従ってしまいそうな、畏怖に似たものを覚えた。
「あんたの部屋ってわけじゃないでしょ?いいじゃないの、ちょっとくら…――」
少し怖じ気づいたのを隠しつつ強がるが、王が剣を抜き、言葉を遮った。
「絶対に入るな。入ったら殺す」
あたしの喉元に剣を突き立て、王が言った。その素早さからも、その実行に迷いのないことが窺える。
ふと、朝の出来事を思い出す。あの靴は、どこから降ってきたんだろう。
記憶を頼りに、外の景色と照らし合わせながら歩いていく。
「確か、この辺…」
ここらは、自分の部屋からも、王の部屋からも離れており、自分の見覚えのある所からは少し外れていた。
一番奥の部屋は、なんだか不気味なほど静かで、なんとなくそこから妙な雰囲気が流れてくるようだった。
誰か、いるのだろうか。あの青年か。だが、降ってきたのは女性用の靴。
確かめてみたい気持ちが強くなり、そっと踏み出す。…と。
「何してる」
突然後ろから飛んできた声に、びくりと肩を震わせた。振り向くと、王が立っていた。
「なんだ、誰かと思ったら。脅かさないでよ」
「ここには近づくな」
いつもよりトーンの低い声に、恐怖と…無条件に従ってしまいそうな、畏怖に似たものを覚えた。
「あんたの部屋ってわけじゃないでしょ?いいじゃないの、ちょっとくら…――」
少し怖じ気づいたのを隠しつつ強がるが、王が剣を抜き、言葉を遮った。
「絶対に入るな。入ったら殺す」
あたしの喉元に剣を突き立て、王が言った。その素早さからも、その実行に迷いのないことが窺える。