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アルカナの抄 時の息吹

第2章 「塔」正位置

「わ、わかったわよ」
突き立てられた剣に若干焦りながら、なぜそこまで怒るのかわからないまま受け入れた。

王は無言で剣を納めたが、しばらく鋭い目を向けたままだった。やがて背を向けると、去っていった。

…なんだったんだろう。初めて王を怖いと思った。少し動揺を残しながらも、あたしは部屋へ戻った。





それから何日か経った。その間、どこかの国を攻めるらしいという情報を得たので、力任せはさせまいとまた入れ知恵をした。

…この国の人たちの素直さというか…正面からの力のみで戦うこと以外に考えが及ばない純粋さには、驚かされる。

王もそうだ。真っ直ぐすぎる、一言で言えばバカ。あの王あって、この民なのだろう。そういうバカは…嫌いじゃない。

と、王があたしを呼び止めた。

「おい!」

「なによ。あの部屋なら、ご命令通り入ってないわよ」
あたしの言葉に、王はあからさまに顔をしかめた。

「…そんなことじゃない。おまえ、軍師になれ」

「は?」

「掃除はもういい、誰かにやらせる。おまえは戦争の策を練ろ」
先人からパク…お借りした知恵を王は大層気に入ったようだ。…相変わらず偉そうなのは、むかつくけど。

「いいわよ。大した策は考えられないけど」
ただ単に突っ込むよりかはマシなの考えてあげる、と言ったあたしに、王は満足げに頷いた。

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