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アルカナの抄 時の息吹

第2章 「塔」正位置

王の機嫌は戻っていた。そういえば、あの青年も見かけない。確か、自分は王に嫌われていると、青年は言っていた…。

「…仲、悪いのかな」
まあ他人のことよね、とそれ以上の詮索はやめる。数秒後には、ああ、またお酒が飲みたい、と別のことを考えていた。





それから、さらにひと月、ふた月ほど経った頃には、帰る手がかりを探すことへの意欲はすっかりなくなっていた。ハースに聞いて城の書庫にも行ってみたが、それらしいものはなかった。

「…はあ」
掃除はしなくていいと言われたため、部屋でゴロゴロとしていた。だが、帰る方法もつかめず、なにもすることがない。

…暇だ。やっぱり掃除しよう。

あたしは部屋を出ると、あんなに嫌だった労働を再び始めた。と、もはや聞き慣れた、トゲトゲしい声が飛んできた。

「何してる」

振り向くと、王が腕を組み、立っていた。

「掃除はもうしなくていいと言っただろ」

「だって暇なんだもの。別にいいでしょ、悪いことじゃないし。好きでやってるんだから」
そう返すと、再びほうきで掃き始めた。王は、うっと言葉をつまらせた。

「いつまでそこに立ってるの?」
しばらく王の存在には気にもとめず手を動かしていたが、未だ行こうとしない王にとうとう言った。

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