アルカナの抄 時の息吹
第2章 「塔」正位置
王が身を起こすと、ハースが慌てた。
「陛下っ…!もう少し安静にされていた方が」
王は頭部を含め、全身を瓦礫に打ち付けられている。意識が戻ったからといい安心はできない。出血し包帯の巻かれた後頭部も、あまり動かすとまた傷の開く恐れがある。
「少し身体を動かしたい。大丈夫だ、すぐに戻る」
心配性の臣下――いや叔父に苦笑すると、王は部屋を出た。
女の様子が気になった。いや別に、心配なわけじゃねえ。ただ、俺が身を呈して庇ったんだ――当然、無事なはずだよな。
女の部屋の前。妙に静かで、中からは何も聞こえてこない。ドアノブに手を伸ばすが、引っ込めた。
少し周りをうろうろする。だが、部屋から出てくる気配はない。だんだんイライラしてきた王は、荒々しく扉に近づき、バターン!と開けた。
「おい、女ッ――」
勢いよく足を踏み入れたものの、ピシリと固まる。
中にいたのは、寝間着代わりのラフな衣服に片足を突っ込んだ、下着姿の女だった。
「ちょっと、入るならノックくらいしなさいよー、まったく」
気にしていないのか、女は足を通しながらあきれたように言った。
「う……」
硬直したまま、わなわなと肩を震わせると、一歩下がり、バタリと扉を閉めた。
「陛下っ…!もう少し安静にされていた方が」
王は頭部を含め、全身を瓦礫に打ち付けられている。意識が戻ったからといい安心はできない。出血し包帯の巻かれた後頭部も、あまり動かすとまた傷の開く恐れがある。
「少し身体を動かしたい。大丈夫だ、すぐに戻る」
心配性の臣下――いや叔父に苦笑すると、王は部屋を出た。
女の様子が気になった。いや別に、心配なわけじゃねえ。ただ、俺が身を呈して庇ったんだ――当然、無事なはずだよな。
女の部屋の前。妙に静かで、中からは何も聞こえてこない。ドアノブに手を伸ばすが、引っ込めた。
少し周りをうろうろする。だが、部屋から出てくる気配はない。だんだんイライラしてきた王は、荒々しく扉に近づき、バターン!と開けた。
「おい、女ッ――」
勢いよく足を踏み入れたものの、ピシリと固まる。
中にいたのは、寝間着代わりのラフな衣服に片足を突っ込んだ、下着姿の女だった。
「ちょっと、入るならノックくらいしなさいよー、まったく」
気にしていないのか、女は足を通しながらあきれたように言った。
「う……」
硬直したまま、わなわなと肩を震わせると、一歩下がり、バタリと扉を閉めた。