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アルカナの抄 時の息吹

第2章 「塔」正位置

「フン。俺を誰だと思ってる。ヴェルテクスの王だぞ」
やっとこちらを向いた王が強気な顔で言った。

「いらぬ心配だったかしらね」

「そうだ」

急にいつもの王らしくなり、なんだかおかしくてくすくす笑う。と、そこへ。

「陛下っ…!!」
そう若くもないのに、ハースがアスリートよろしくものすごい勢いで走ってくる。

「大変、ですっ…!出兵、していた、兵士たちが…――」
息も切れ切れで話すその様子から、ただ事ではなさそうだと二人は察する。

「――先ほど帰還しました。例の部隊です」
そこまで一息で一気に言うと、ハースは肩で息をしながら汗をぬぐった。

あいつが…――

「…帰還?」
王は眉を寄せた。予定より早すぎるし、予定外の帰還には報告を義務付けているはずだ。そんな連絡は入っていない。

「どうも、さきの砲撃と関係があるようで…」

それを聞いた王は、顔色を変えた。先日の大砲による城の襲撃は、ゲリラ的なものだった。どこからか国内に侵入し、城を砲撃したようなのだが、使われた大砲らしきものも、怪しい者たちも見ていないと巡回していた兵士たちは口々に言う。

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