愛恋縁一方的愛情劇
第1章 遊び人は凶暴な狼
「止めてっ!!返して下さい!」
「あ?何言ってるかさっぱり分かんねぇな。」
今日また、僕はいじめられる。
今、僕は鞄を惇君達に取り上げられていた。
僕は必死で叫んでいるのに、声がちっさいせいか誰も見向きもしてくれない。
「も、返してよっ!!」
僕が取ろうとした鞄は、見事に弧を描き、学校の中庭の池に落ちた。
「…あ…」
「悪ぃ悪ぃ!!ま、気にすんな!!」
僕の肩を叩いて消え去る惇君達…
鞄…取らなきゃ…
鞄は、無惨に池の上を浮遊していた。
「…っと…」
棒でちょんちょんとつつきながら自分の方へ寄せる。
「あともー少しぃー」
腕を目一杯延ばして、鞄を掴む。
「やったっ」
鞄を手にして、素早く池から離れる。
池に落ちたら風邪引いちゃうし、また喘息が出たら大変だ…。
「坂下、まだ学校来てるんだー」
ここは共学で、僕は皆にいじめられている。
…というか、嫌われている。
「あ、ごっごめんっ」
「うわぁもう汚い!!近寄らないで!!」
「…ごめん…」
ポツーン…
僕が佇んでいると、上から声が…
「亮!!早く鞄もって来いよ!!また投げてやるからよ!!駄犬!!」
惇君だ…、早く行かなきゃ…
僕は、鞄を大事に抱えて階段を上っていく。
途中、色んな人にぶつかったけど、存在に気付かないのか、謝っても無視された。
ガラ…
教室に入るといつもの冷たい視線。
惇君がもう少し、僕に優しくしてくれたら、きっとみんな意地悪しないと思うんだよなぁ。
「よぉ駄犬。鞄もって来いよ。」
やっと辿り着いた教室から、中庭の池までは結構遠い。
また走らされるなんて…有り得ない。
「や…だ。」
「ん?今何つった?」
惇君に脅されたって鞄は離さないから。
ギュッと鞄を抱き締めた。
「嫌だ!!」
惇君の目を見て、強気で答える。
…けど、やっぱり僕は弱くてダメダメだから、惇君に散々殴られた上にまた、鞄を投げられた。
…やっぱり僕は、無力だ。