
不器用なアナタのそばに…
第1章 彼らとの出会い…
あれからしばらくして、いつの間にか動き出していた車がある場所で止まった。
蓮はやっと泣き止んで俯いているみきの手を引っ張り、一緒に車を降りる
着いた場所は大きな屋敷のようで、その玄関には1人の男が腕を組んで待ち構えていた。
「やぁ、意外に早かったね…」
男は腰あたりまである長い黒髪を一つに結んでいて、優しい顔立ちをしている
「あぁ…」
「ん?」
男は蓮に腕を掴まれているみきの姿を見て言った
「蓮、その子例の?」
「……そうだ」
蓮が短く返事をすると、男はゆっくりとみきに近付いてきた
「…はじめまして、俺は五十嵐尚吾(イガラシ・ショウゴ)。君の名前は?」
みきの目線に合わせ、腰を低くして微笑みながら尚吾が聞く
みきは顔を少しだけ上げ、尚吾を見て迷いながらも答えた
『…っ……神田みき…』
「みきちゃんか、可愛い名前だね。……でも目が腫れちゃってる」
尚吾はみきの目元を優しく指で撫でる
「どーせまた蓮が泣かせたんでしょ?」
「なっ…!」
「図星だろう?まったくいい加減にしなよそのS」
呆れたような目線を蓮に向けて尚吾が言った
「う、うっせーな。てめえは腹黒じゃねえか!」
「Sよりマシじゃない?」
「マシじゃねぇ!」
『……………』
みきが2人の会話をじっと見ていると、それに気付いた蓮が乱暴に自分の頭を掻いた
「…んだよ」
『…あ、いえ……なんだか二人ともヤクザっぽくないなって思って……』
「そうかい?」
「……ッチ、来い」
蓮は再びみきの手を引っ張り家の中へと向かった。
『あっ…』
「じゃあまたね、みきちゃん」
小走りで必死に蓮について行く彼女に尚吾は微笑みながら軽く手を振った
「…まったく、蓮ってばあんまり乱暴にすると嫌われちゃうよ?」
