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林道

第1章 其の一

どこからか聞こえる声。

覚えているか?初めての夜を。

忘れるわけないわ。あの日の夜を。

そうだ。

そうよ。

一つであることを確認した夜を。

タカヤはカノンで、カノンはタカヤだった。

折り重なって掌を合わせれば、私の指先の感触はタカヤの指先の感触だった。
俺の鼓動はカノンの鼓動だった。

ああ。

この世界に生まれたときから、一つであったはずなのに、不幸にも俺と私はそれを再確認しなければならなかった。

でも。

そう。

そうだ。

ええ。

再確認できることは幸せだった。

元々一つであったのだから。

私達は、

俺達は、


二つに別れてしまったけれど、本当は一つだったのだ。

それが、二人の真実の世界。

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