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林道

第1章 其の一

「もう、許して」

聞こえる。

タカヤの呼ぶ声が。

あのときと同じように。

私を呼んでる。

―カンナ、助けて…。

寒いよ。

背中に冷気が凍みる。

頬が削げてくる。

止めて。

ねぇ、止めてよ。

あのとき、私がタカヤを信じていたなら。

私とタカヤはまだ一つでいられたのに。

ああ、もう駄目だ。

私は駄目だ。

吐き気がする。

胃の中には何もないのに。

「タカヤ…」

カンナは呟く。




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