テキストサイズ

どらくえ3

第8章 ロマリア

屋根の上。

アベルは煙突の陰に身を潜める。

盗賊カンダタを待ち受ける。

―ここを通るはずだ。

別にアベルには賊を捕まえてやろう、という気はなかった。

ただ、おもしろそう、という興味だけがあった。

アベルもアリアハンでは様々なイタズラをしてきた。
悪行ではないが、おもしろそう、なことを思い立つと我慢できなくなるのだ。

危ない目にもあって、なんとか切り抜けてきた。

その勘が告げている。

―カンダタはここを通る。
じっと気配を殺して待つ。
兵士「あっちだ!」

兵士「あちらを防げ!」

ピー!っと笛がなる。

犬が笛に反応して遠吠えをしている。

―…来たっ!

ダンダンッ!ダンッ!

暗がりの屋根を大柄な人影が向かってくる。

―引きつけろ。

最初が肝心だ。

ギリギリまで近付いたときに不意討ちをする。

卑怯かもしれないが、戦法だ。

暗闇で足場が悪ければ、初めにバランスを崩せば、勝てる可能性が高い。

―近付いてきた。

ごくり。

アベルは唾を飲み込んだ。
その瞬間だ。

足音が止まった。

こちらをうかがっている。

―っ。気付かれた?!

―いや、まだわからない。

動かず我慢する。

相手も動かない。

我慢比べだ。

―くそっ!

さすが名の通った盗賊だ。
一筋縄ではいかない。


エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白いエモアイコン:共感したエモアイコン:なごんだエモアイコン:怖かった

ストーリーメニュー

TOPTOPへ