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どらくえ3

第2章 岬の洞窟からナジミの塔へ

「アベル、アベル。起きろ」
誰かが呼んでる。
母さんか?
「アベル、早く起きろ、敵だ」

敵?
俺は慌てて飛び起きた。
イースが気配を殺して周囲の状況を確認している。
そうだ、イースが焚き火の見張り番をしてくれて、俺は眠っていたんだ。

「敵?」

俺は剣を構えながらイースに尋ねる。

「ああ、気配からして、オオガラス4匹。明るかったら楽勝なんだが、暗いと奴らは見えにくい。闇夜のカラスってやつだ。」

確かに、まだ深夜で、月明かりや焚き火の明かりはあるものの、暗くて、羽音がバサバサと聞こえるだけで敵の姿は見えない。

「アベル、奴らは飛んでくる。地形を利用しろ。まず1匹を狙え」

「わかった」

簡潔な指示に俺はトーンを落としてイースに返事をする。

イースも鋼の剣を抜いて構えている。

バサアッ!

アベルの視界が突然塞がれる。

とっさに身をよじって、地面に倒れ込む。

頬に何かがかすって血がにじんだ。

オオガラスは両翼を広げると人間の大人よりも大きい鳥の魔物だ。

「くそっ!」

くちばしか爪で襲われた。危なかった。

イースは木の幹を背、前に焚き火の立ち位置。

焚き火を避けてオオガラスが右から尖ったくちばしで襲ってくるのを、イースは軽くさばいた。

オオガラスがバランスを崩したところを、イースはひねった体を戻しつつ、そのまま袈裟斬りに剣を降り下ろす。

ザンッ!!

オオガラスの体が地面に叩き伏せられる。

黒い羽根が宙を舞う。

「1匹とった!」

イースが叫ぶ。

アベルも起き上がって木を背にして構える。

残り3匹だ。

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