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切ない朝

第2章 駅

駅についたバスは乗っている人を吐き出し、新たな乗降客を求めて走り去っていった。

昌子はバックを二つ、肩にかけて駅の改札にいた。目的地までを確認して、切符を買う。普段は歩いて学校に行くのでこの時間に電車に乗る事自体が初めてなので、少し緊張しているようにも見えた。

やがて改札を通り抜け、ホームへ向かう階段を上ってゆく。朝7時半とはいえ、6月も後半の気温は夏への高まりを見せて、ぐんぐんあがっているようだ。荷物を持った昌子の顔も少し、汗ばんできた。

ホームに降り立った昌子は思わず 「ぇぇえ」 と声を出してしまった。人がむちゃくちゃ多いのだ。これがうわさに聞く通勤ラッシュかとびっくりした。一応、少しの時間の余裕は持っているが、本当にこれだけの人間が電車に乗れるのか少し不安になった。昌子の後ろからも後から後から人が流れてくる。ちょっと思考が止まったがなるべく人が少ない列の後ろについた。
電車はすぐにホームに入ってきた。ドアが開くが降りる人はほとんどいない。その後すぐに並んでいる列の人が電車に乗り込んでいった。いや、乗り込むというより押し込むだ。昌子も後ろから押されるように電車入りかけたがバックがドアに引っかかる。後ろからの流れに逆らって一度ホームに出てバックを引っ張る。かなり力が必要だったが何とかバックは昌子の手元に帰ってきた。
「っち」
誰かが舌打ちする。すでに昌子はこの電車に乗るのをあきらめた。通勤電車のラッシュのすさまじさにすでに乗る気を無くしていたのだ。
電車はすぐに扉が閉まり、ドアには押し付けられているサラリーマンのおじさんたちが張り付いていたがお構いなしに電車は加速し、駅を離れていった。

「ふぅっつ」
昌子はひとつ、息を吐いて気持ちを落ち着かせた。

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