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切ない朝

第7章 もう少し

「こんなに感じてくれて、うれしいよ」

男がささやいてきた。その言葉が昌子にはしびれるくらいうれしかった。今の昌子を肯定してくれている。倒錯した喜びだ。

昌子の男のものを刺激する動きは小さくなっていった。感じてしまって他の事ができなくなってきた。

「感じているその顔、すごく素敵だよ」

昌子は顔をねじって男の顔を見つめた。男の顔も昌子ほどではないが上気していた。

車内の熱さのせいだけでない。

昌子はもう一方の手で男の左手を握った。

男も握り返してくる。

今までは男にささやかれても返事は出来なかった。
今も声に出しての会話は出来ていないけど、握った手は昌子と男のコミュニケーションだった。

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