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後悔

第2章 私という人間

私は、母一人子二人の、いわゆる母子家庭の次男坊として育った。身内を悪く言うのは多少気が引けるが、私の父親は、典型的なロクデナシだった。酒に酔っては、母と我々兄弟に手をあげ、アザが出来るまで殴られた。あげくの果てには、わが家から300~400メートル先の家に愛人を作り、その連れ子を住まわせていた。当然家計は苦しかったが、母の手一つで兄弟共々、高校まで行かせてくれて、母には今でも足を向けて寝られない。

私が、本気で恋愛に踏み込めないのは、実は、このろくでなしの父親の血を引いているからだ。必ずしもそうとは限らないのかもしれないが、「蛙の子はカエル」なのだ。私が家庭を作れば、あの父親のようになり、妻を子を傷つけるのではないかと頭をよぎる。私はそれを目の当たりにしてきたのだ。振り払うのは容易ではない。
25才の時別れた女性は、こんな私のような奴が相手でも、結婚を望んでくれた。嬉しかった。本当にうれしかった。
だが・・・私は、あの父親の子なのだ。
私が結婚に躊躇し、その女性を待たせている間に、その女性は、私の前から去っていった・・・「自分と結婚する気がないのなら、別れましょう」、と言って・・・・

その女性は、私と別れて程なく結婚し、現在は4人の子の母親で、一人の男性の良き妻として幸せに暮らしていると、風の便りに耳にした。

これが、私のこれまでの恋愛経験だ。もうひとつの恋愛は・・・余りにもお粗末な顛末であり、語るに忍びない・・・・

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