秘書のお仕事
第9章 板挟み
見ると、どうやら食堂にある人物が入ってきたらしい
社員の目線は一点に集中している
一体どこのだれだよと目を凝らして見ると
『社長…』
だった
「あれ社長じゃんよ、食堂に来たとこなんて初めて見たぞ?」
涼の驚いた顔を見る限り、珍しい光景みたい
社長が食堂に来るっていうのは…
まぁ、あたしも入社してまだ浅いけど、社長がここに来るのを見るのは初めてだ
『…社長だって人間だし、食堂に来ることもあるよ』
「千晴の言い方もなかなかだな」
特に気にしないよう振舞っていたが、なんとなく足音が近づいてる気配がする
「こんなところにいたのか」
ほらね
『何でしょうか?』
顔を上げると、料理をお盆に乗せて突っ立っている社長の姿があった
見慣れない光景に、噴き出しそうになるのを堪える
「俺も食事を取る」
『どうぞご自由に』
必要もないのにあたしの許可を取ってから、社長は椅子に腰掛けた
隣に座って来た社長
あたしは別に何ともなかったが、さっきまでガヤガヤとしていた空気は静かになった