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第1章 君

教室に入ると休み時間だった。
次は体育。
今日は私と中宮君が用具係だ。
彼は先に行っているという事なので、体育着を持ち
急いで急いで倉庫に向かった。
彼は重そうに大きなマットを運んでいた。

「ごめんね遅れちゃって、すぐ手伝うからっっ」
「いいよ。早く一緒に運ぼう。」
彼は息を上げながらにこやかに許してくれた。

二人がかりで時間ギリギリに運び終わった。
倉庫に戻ってチェック票に丸をつけに戻った。


「ふぅ〜ギリギリセーフだね。」
「うん。ところで着替えは?」
「忘れてたっ。どうしよう……教室に戻る時間ないし…。」
「ここで着替えれば?」

びっくりした。
私は少しドキドキしていた。
着替えを覗いたりしてもしかしたら好きになってくれるかも。と

「絶対に覗かない?」
「僕は体育館に居るから心配しないで。」
思いもよらぬ展開に私は焦った。
私は覗いて欲しいのに、、、
「こっここってオバケ出るらしいしっ
薄暗いから怖いからいてよっ。」
「そうなの?じゃあいいよ。後ろ向いてるから。」

そういうと少しばかり頼りない背中を
私に向けてちょこんと座った。

私はあえて道具の隅に隠れず、
堂々と彼の後ろで着替えを始めた。

少しばかりの照れと期待を込めて。

でも彼はちらっとも見ない。
床の埃と遊んでいる。
そんな中彼から口を開いた。

「沢井さん今日はなんか元気ない。
大丈夫?」
「うん、、、昨日親と喧嘩しちゃって……
2人とも私を怒鳴りつけてね。少し夜遅くまで勉強してただけなのに、、、
すぐに寝ようとしたのに朝まで怒ってて
しばらく外出禁止だってさ、、、
私、、、へこんじゃった」

彼の気を引こうとして
さも哀れそうに嘘をついた。

「でも沢井さんは偉いよ。
夜中まで勉強なんて。」

私の触れて欲しい所には触れてくれなかった。

沈黙が流れた。

次に口を開いたのは、私だった。

「あの、、、さ。
今日、、、、、、泊まりに行ってもいい?」

私はハッとした。
なんてこと言ってんだろう!!
すぐに訂正した。

「あっいや別にね!
どうかな〜みたいなっ!
深い意味とかそんなんじゃなくって!!!
ほんとに!
な、、、なんかごめんね!」

「そう?僕は別に良かったのに。」

「、、、じゃあ、、、、行ってもいい?」

「うん。」

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