
あたしのご主人様!
第2章 ご主人様とピンクローター
シュウの後ろを、正確に言うと斜め後ろを歩きながら、シュウの姿をちらちらと確認した。
この人が、SMの掲示板に書き込みをしていた人。そのことが意外に思えてならなかった。
外見が、あまりにも普通の人なのだ。普通というか、どちらかと言うとかっこいい。
ワックスで軽く整えた茶髪。高い身長。チャラチャラはしてないけれど、服装もオシャレに感じた。特別イケメンというわけではない。探せばいそうな若いお兄さんという感じだった。
SMというジャンルだけにどんな人か見当もつかず、ただ漠然と、もっと癖のある人がくるのかと思って身構えていたあたしは、内心ほっと息をついた。
「どうぞ」
喫茶店のドアを開け、手のひらでやんわりと中に入ることを促すシュウ。
「あ、どうも」
あたしのためにドアを開けたまま待っていてくれていて、あたしは小走りに中へと入った。
「タバコ、吸う?」
「吸わないです」
あたしは首を振って答えた。
オーダーを取っている店員が、
「いらっしゃいませ。少々お待ちください」
と声を張り上げる。
シュウは軽く会釈し、禁煙側を見やった。
あたしたちは店員を待たず、禁煙側の一番奥のテーブルに腰を下ろした。
