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Memory of Night2

第4章 同居


 四角く切り取られたフレームの中でも、彼女の秀麗な美貌は衰えていなかった。

 女の盛りの年齢だというのに、彼女は素顔のまま、化粧っ気がない。

 ただ、不機嫌そうに細められた瞳が、真っ直ぐこちらを射抜いている。

 記憶の中の彼女もそうだ。漆黒の髪と灰色の瞳。整った容姿と絹のようにすべらかな柔肌は、見るものに強いインパクトを与え、虜にする。

 色褪せた写真越しに、彼女の姿を眺めていた。随分と久しぶりだ。

 もう長い間、箪笥の一番奥にしまい込んだまま目にすることのなかった写真を、今さら引っ張り出したのには理由があった。

 彼女と瓜二つの少年が、目前に現れたからだ。


「なんの巡り合わせだよ……たく」


 毒づく言葉は、辺りを包む静寂に溶けていく。

 消えかけていた憎悪の種火が、ふつふつと燃え広がっていくのを感じた。

 写真の中の彼女としばらく合わせていた視線を、ふいに逸らした。こざっぱりとした六畳の部屋は、暗闇が支配している。部屋の電気も消したままだったのをようやく思い出した。

 開け放した窓からは風が吹き込み、カーテンを靡かせている。

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