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Memory of Night2

第4章 同居


 戸惑う宵に晃がたたみかけた言葉は一言だけ。


「ずっと一緒にいたい」


 それは付き合って数ヶ月経った頃、あの雪の日に宵が晃に告げた言葉だった。

 あえてその言葉を選んだのか偶然重なっただけなのかはわからないが、いつもは自信ありげな晃の表情が、その瞬間だけ崩れて見えた。

 つぶやきにもささやきにも似た告白の呪文と、さまようように揺れ動く、茶色の瞳。

 その視線に負け、結局宵はその申し出を受け入れる他なかったのだ。

 一週間前の晃の顔を思い出し、今と見比べるように隣に佇む晃を見つめていると、ふいに晃は笑ってベッドに視線を向けた。


「午前中撮影だったんじゃ、疲れたろ? シーツ替えといたから、寝てていいよ」

「用意のいいことで」

「いや……昨日あんまり、寝かせなかったし」


 そう付け足す晃を宵はちらりと一瞥したが、確かに昨日寝たのは三時近くだった気がする。

 春加の車では居眠りをしてしまっていたし、撮影による疲れや食後というのも重なり、眠気はそれなりにある。


「じゃーちょっとだけ」

「どうぞ」


 宵は借りていた茶色いスリッパを脱ぎ、晃のベッドにごろりと横になった。

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