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Memory of Night2

第4章 同居


 間髪入れずにそう返され、宵は苦笑する。


「きっと美人だったんだろうねー」

「……顔はともかく、女としてはいろいろ終わってた気がする。化粧とかオシャレとか嫌いな人だったし、キレると口より先に手や足が出るタイプだし。気性も荒かったし」

「まさに君」

「……言うと思った。否定はしねーけど、確かに似てたしな、顔だけじゃなくて、体質や性格も。志穂さんとは真逆なタイプだった」


 今思い返せば、女どころか母親としてもいろいろ問題があったような気がしてならない。

 虫の居所によってずいぶん理不尽な理由でよく怒鳴られた。


「……元ヤン上がりだったし、多少気性が荒いのは仕方ねーと思うけどな。あの人の躾は結構酷かったぜ」

「元ヤンなの!?」

「そ。しかも親父の方が母さんより年下だったから、止めるやつがいなかったんだよ、あの人の暴君を」

「まさにかかあ天下だね」


 晃が失笑する。


「お父さんはどんな人?」

「んー、ゆるーい人だったよ、親父は。いつも母さんの尻にしかれてた」

「不憫な」


 哀れむような眼差しを向けられ、宵は考えこむように目を閉じた。


「……だから浮気に走っちまったのかもな」


 つぶやいて、晃の手にあるアルバムを見つめた。

 それからあくびを一つする。

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