 
向かいのお兄さん
第9章 祭
「消さないよ」
『…』
「消すわけないじゃん」
直也はあたしの頬を撫でた
その指先を滑らせ、あたしの顎を持ち上げ
軽く唇を重ねた
「こんなに面白いおもちゃ、手放したくない」
『…』
面白い
おもちゃ
「もう、いいから。
早く駐車場行くぞ」
『…』
「…流すぞ」
またそうやって
脅す
『行かない…』
「は?」
『あたし…帰る…』
もう
直也の言いなりは
やだ
「声、流すって言ってんだろ?」
『帰る…』
あたしは、体の向きを変え
自宅の方へ歩いて行こうとした
「花火見なきゃ損だろ!!」
初めて直也に
怒鳴られた
驚いて振り返ると
もうあたしの手は、直也に引っ張られていた
 
 作品トップ
作品トップ 目次
目次 作者トップ
作者トップ レビューを見る
レビューを見る ファンになる
ファンになる 本棚へ入れる
本棚へ入れる 拍手する
拍手する 友達に教える
友達に教える