 
向かいのお兄さん
第25章 聞いて
「この部屋ってさぁ…」
『直也の部屋だよ…?』
「…」
直也は本を元の位置に仕舞った
諦めめいた面持ちで、あたしの方を向く
「…例えここが俺の家だとしても…俺は、自分の家に帰るから」
例え
だとしても
直也は認めた
『やだ』
「美咲ちゃんが決めることじゃないから」
『…』
確かに
その通りかもしれない
あたしは
直也を事故に遭わせたけれど
今はもう部外者なのかもしれない
『直也は…ほんとに何も、思い出せないんだね…』
「今が、全部だからさ」
でも…例えそうだとしても…
あたしは…
 
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