向かいのお兄さん
第25章 聞いて
『…わかった』
あたしがそう言うと、
何となく逸らしてあった直也の目が
あたしを捉えた
「ほんと?」
『うん、ここは直也の部屋じゃない』
言いたくない
『あんたの家は、他のとこ』
言いたくない
『あたしも、もう…
関わらない…』
こんなこと
言いたくないのに
「別に…そこまで深刻になんなくてもさぁ…」
『関わらない』
この気持ちのまま
あたしを知らない直也のそばにいるなんて
つらいから…
『関わらないから…ひとつだけ、お願いがあるの』
「…何?」
出来ることなら
いくつもいくつも
あたしのお願い、聞いてほしいよ…