向かいのお兄さん
第30章 ありのままがいい
『お待たせー』
あたしは助手席に乗り込んだ
「おはよ…」
そう言いながら、直也はあたしの顔を見てポカンとした
『どうしたの?』
「え、んと…化粧?」
『うん』
直也は納得したように、口を開けたまま頷いて
前を向いた
『…』
何その微妙な反応…
直也は車を走らせた
「どこ行きたい?」
『どこでも』
正直、不機嫌になった
何でって、何となく直也が素っ気ないからだ
「…じゃあ、カフェでも行こ」
そう思いつくと、直也はハンドルを切って道を曲がった
車を走らせてしばらくしてから、あたしは思い切って言った
『ねえ、今日の服、どう?』
直也は目だけをチラッとこっちに向けると
「あー、服は可愛い」
と言った
…服"は"?
『他は?』
「髪とか、巻いてるのが可愛い」
『他は?』
「…うん…」
直也は黙ってしまった
何なの?
化粧してみたんだよ?
直也の彼女として胸張れるように、がんばったのに…
そしてあたしたちはカフェに到着した