向かいのお兄さん
第30章 ありのままがいい
「似合ってるとか似合ってないとかじゃなくて…
でも、せめてもうちょっと薄くてもいいと思う」
何でそう、遠回しに言うわけ?
『…』
「それに化粧濃いとさ、軽い女だって見られそうだし、すぐに狙われそうだし」
『…』
「俺はありのままの美咲の方が好きだなーって
そんだけ」
直也の言いたいことは、わかったけれど
素直になりきれないあたしは、
それを自分の中におさめることが出来なかった
『…もうやだ』
あたしは席を立ち、お手洗いに駆け込んだ
赤ちゃんのおむつ替えなどが出来るように
中は広かった
あたしは水を出して手で掬い、思い切り顔にぶちまけた
「おい美咲…!!」
直也はあたしを止めるため、後ろからあたしの体を引っ張った