 
向かいのお兄さん
第36章 どっち
すると、かっちゃんは少し口の端を上げてみせた
「ついに、直也に不満爆発?」
『そんなんじゃ…』
ない
わけが
ない
あたしはやっと、顔を伝い落ちる涙を
服の袖で無茶苦茶に拭いた
「何か、言われた?」
あたしはブンブンと首を横に振った
その動きが止まると、いちいち涙が溢れた
格好悪いから人前では泣きたくないけれど
自分に話し掛けてくれる存在の前では
どうにも止めることが出来ない
「あーはいはい、泣くなって」
大きな手は、あたしの頭を優しく撫でてくれた
かっちゃんは辺りをキョロキョロと見回してから
あたしの背中を押して、あたしの家へと連れていってくれた
 
 作品トップ
作品トップ 目次
目次 作者トップ
作者トップ レビューを見る
レビューを見る ファンになる
ファンになる 本棚へ入れる
本棚へ入れる 拍手する
拍手する 友達に教える
友達に教える