
向かいのお兄さん
第36章 どっち
すると、かっちゃんは少し口の端を上げてみせた
「ついに、直也に不満爆発?」
『そんなんじゃ…』
ない
わけが
ない
あたしはやっと、顔を伝い落ちる涙を
服の袖で無茶苦茶に拭いた
「何か、言われた?」
あたしはブンブンと首を横に振った
その動きが止まると、いちいち涙が溢れた
格好悪いから人前では泣きたくないけれど
自分に話し掛けてくれる存在の前では
どうにも止めることが出来ない
「あーはいはい、泣くなって」
大きな手は、あたしの頭を優しく撫でてくれた
かっちゃんは辺りをキョロキョロと見回してから
あたしの背中を押して、あたしの家へと連れていってくれた
