
向かいのお兄さん
第36章 どっち
「で、結局直也は、由紀ちゃんと付き合ってるわけね」
かっちゃんは、直也の背中に微笑した
「じゃあ俺が美咲ちゃんをもらっても、いいってわけだ」
その瞬間、ピタリと直也の足が止まる
「は?」
緊迫した空気にがらりと変わったことに
かっちゃんはもちろん、直也も気づいた
しかしそれを笑い飛ばそうなどとはしない
「だからー、俺が美咲ちゃんをもらってもいいんだろ?」
つい手に持っていた服を落としてしまい
かっちゃんはそれを拾おうとしゃがむ
「かっちゃんって、冗談とか言う奴だっけ?」
「言わない奴だよ、俺は」
表情を変えない直也に、
かっちゃんは付け足して言った
「ああ、あれ。
美咲ちゃんとのキス、とろけちゃいそうだった」
