
向かいのお兄さん
第37章 限界
直也の目が
大きく開かれた
閉じていた唇も
若干開きそうになった
けれど開ききることはなくて
何も言葉が出ないまま、ずっと目と目が合った
『直也…教えて…』
搾り出すように言った
直也は視線をあたしから逸らして
「…言えない」
あたしの手を振り払い
仕事に戻っていった
教えて欲しいことが
もうひとつ出てきた
何で直也は
今、そんなにつらそうな顔、見せてくれたの?
『…』
でももうこれで
直也に会う勇気も
直也と喋る元気も
全部、底を尽きた
あたしの奥の奥に
ドロドロとしたわだかまりだけが渦巻いて
残った
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