
向かいのお兄さん
第38章 不器用なあんた
「直也、これ運んどいてくれー」
「へーい」
両手に大きな段ボール箱を抱え、直也が中から出てきた
その荷物を車に積み終わるのを見届けてから
あたしは直也に声を掛けた
『直也』
「…」
一瞬こっちを向いただけで、すぐに行ってしまおうとする直也を
あたしは掴んだ
『すぐに、終わるから…』
「…」
心配げな表情を職場の方、つまり、多分、由紀先輩の方に向けてから
「すぐに、だな」
と言って、ついて来てくれた
由紀先輩は、もちろんあたしたちに気づいて
不快そうな顔を見せていた
あたしと直也は
隣にある駐車場の隅まで移動した
