
向かいのお兄さん
第47章 記憶にない記憶
どうやら、人は誰もいないようだ
声も足音も何も聞こえない
『…夕方か』
教室の窓から見える景色は、ほとんどがオレンジ色だった
壁に掛けられている時計は、5時を示している
『…あ、携帯…』
そうだ、電話しちゃえば…
といつもの調子でポケットを叩いたけれど
携帯は鞄に入れたままだということを思い出す
『…』
ど
どうしよう…?
外に出て辺りをさ迷うか…うん、そうしよう
そうして、交番でも探せば、なんとでもなりそうだ
そう思って窓枠から手を離し、振り向いた瞬間―――…
