
向かいのお兄さん
第49章 幼いお前
「どうしたの?」
声を掛けると、赤い物がビクンと震えた
それはランドセル
背負ったその子は、ビクビクと怯えながらこっちを向いた
『…だぁれ…?』
しゃがみ込んだまま、顔だけこちらを向くその仕種は
可愛らしく思えた
「…泣いてるの?」
怖がらせてはいけないと思い、自分も腰を屈めた
赤いランドセルを背負った女の子は
そのまま数歩、後ずさる
「…それ…」
女の子の足元に、何かが落ちていた
どこでかき集めたのかわからないような粗末な藁の上に
鳥の雛がいた
俺がそれに目をやると、女の子は雛を手で隠した
『ごめんなさぃ…』
「…」
さっきまで泣いていたんだろう
真っ赤に充血した目に、また涙が溜まっていった
