
向かいのお兄さん
第49章 幼いお前
「…」
俺が黙ると
女の子は俯いた
何かしらの罪悪感からか…
それが何なのかはわからなかったが
とりあえず俯いた
「え…」
ただその時の顔が
似ていた
「…美咲…?」
女の子は目を大きく開くと、俺の顔をじっと見据えた
『何であたしの名前…しってるの?』
「え…あ…」
ありえないだろ
「君って苗字、何ていうの?」
女の子は少し躊躇いを見せたあと
仕方なしに口を開いた
『…松浦美咲』
絶対、ありえないって…
「へぇ…」
『ねぇ、どうして名前、しってるの?』
「…」
涙で潤んでいたはずの目が、反って輝いて見えた
「お兄ちゃんは、何でも知ってるから」
『ほんとに!?』
小さな美咲は
小さな歯を見せるように笑った
