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願わくば、いつまでもこのままで

第9章 とまれない、とまらない




顔も心なしか
赤くなってきてるような気がする比奈ちゃん



俺はつい


「くっ」


笑ってしまった



「あはははっ」




びっくりして目が大きく開く比奈ちゃん


だがそのすぐ後に頬を緩ませた。





「もう……なんで陽君、笑ってるの?」



「さあ、なんでだろうね」




ははっと、また笑ってしまう。


嬉しくて笑ってしまったんだ




久しぶりに


比奈ちゃんらしい笑顔を

見た気がしたから





「今日はどうして家に?」



「どうしてって、
それはこっちの台詞よ!
最近家に来なくなったものだから
2人で心配してたんだから……」




2人で?





「あのねぇ
俺だって子どもじゃないんだから
そういつまでもさ……」





「じゃあ、もう来ないの?」




「正月ぐらいじゃない?
そんな寂しいような顔しないでよ
比奈ちゃん
これが普通なんだから
家だって近いし、ね」




そう

今までがおかしかったんだ



兄貴がいないときに
1つ屋根の下で2人きり




理性


罪悪感


叶わない恋への未練



好きな人と一緒にいる幸せ






あの小さな空間には

いろんな想いがつまり過ぎてて



楽しくて嬉しくて幸せだったけど

息苦しかった





「でもさ
来てくれてありがと、比奈ちゃん」




テーブル越しの彼女の頭を軽く撫でる。


だが
比奈ちゃんは驚いて俺の手を跳ね除けると、髪を整え手を頬に当てる。





「?」




彼女は
嬉しいような困ったような顔をするが

俺にはその表情の意味が分からなくて
首を傾げる。




でも


ああ

そういえば




こんな表情を


園田がよくしていた気がした






でもそれって


どういうことなんだ……?





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