テキストサイズ

願わくば、いつまでもこのままで

第9章 とまれない、とまらない





「陽君……」



「比奈ちゃん?」




陽君の瞳が私を捉える。

その瞳を私も捉える。




見つめ合う目と目は


とても
哀しげだった





陽君の想いはほんの少し前から
もしかして、と思っていたけれど

私は目の前の彼に対するこの感情を認めて初めて気づいた


陽君はずっとこんな気持ちだったんだ




義理でも家族である人を
好きになってしまって

理性と戦いながらも

会いたい欲求を叶えてしまって

それでも会った後には
虚しさや哀れみが残ってしまって




でも

だから

もう
家には来ないんだね




はたして
陽君の気持ちを

私の気持ちを

和君にはお見通しなのだろうか




もし気づいていないとしても

だからといって
いやだからこそ

この想いは赦されないことだ





私がこの感情を隠せばいい


消すことはできなくても
自分だけの秘密にすればいい



陽君は
家に来ないと言った

それは彼の限界である証拠


だったら私がこの気持ちを隠せば
後は勝手にすむ話だ




でもそれは


すごく

かなしいなあ




しょうがないことだけど

かなしい……かなしいよ




ストーリーメニュー

TOPTOPへ